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塩谷郡市医師会学術講演会:2020/11/17

本日さくら市氏家保健センターにて上記開催された。
心不全治療の最新の知見、という題名で、国際医療福祉大学病院教授
武田守彦先生によるご講演

心不全患者の30-50%は左室収縮能が保持されていることが報告さてている。
左室収縮能が低下した心不全をheart failure with reduced ejection fraction (HFrEF)
左室収縮能が保たれた心不全を、HF with preserved EF (HFpEF)

本日のメインテーマ:アンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI):valsartan/sacubitril
ARNI(アンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)とは、ネプリライシン阻害薬とARBバルサルタンの2つの作用から成る化合物。ネプリライシンとは、ナトリウム利尿ペプチド、ブラジキニン、アドレノメジュリンやその他の血管作動性ペプチドを減少させる酵素。初のARNIであるvalsartan/sacubitrilとACE阻害薬であるエナラプリルを比較したRCT(PARADIGM−HF)において、ARNIは心血管死亡と心不全入院の複合エンドポイントを有意に20%減少させている。ARNIを使用する上で、ACE阻害薬の投与は、依然HFrEFの予後改善に有効であること、ACE阻害薬に認容性がない患者ではARBを使用すること、ACE阻害薬やARBに忍容性のあるNYHA2 -3のHFrEF患者では、予後改善のためにARNIへの置換が推奨されること、ARNIはACE阻害薬と同時に使用すべきでなく、またACE阻害薬服用後36時間以内は血管浮腫の副作用を引き起こしやすいためARNIを使用しないこと。舌の巨大な血管浮腫を起こした患者さんの写真を見せていただいた。

この薬を使用した時には、BNPを増やす働きがある薬なので、BNPは心不全の指標には使えなくなることに留意する。B N P と N T - p r o B N P は 同 じ 遺 伝 子 に 由 来 し 、同 じ 目 的 で 使 用 さ れ て い ま す 。し か し 、数 値 に 違 い が あ り 、一 般 的 に B N P よ り も N T - p r o B N P の 方が4~5倍高い値を示す。BNPは半減期が20分と短く一般のクリニックでの測定は出来ない。

エンレスト(サクビトリル・バルサルタン・ナトリウム水和物錠:valsartan/sacubitril)は、製造承認後1年とたたないうちにアメリカのガイドラインでclass1推奨となった。 心不全患者にはまずACE阻害薬を投与することがこれまでの標準治療だったが、valsartan/sacubitrilがACE阻害薬からの切り替えを推奨されclass1適応となったことは、心不全治療においての大きなパラダイムシフトである。しかしながら、まだ同薬の介入試験も少なく、一方でACE阻害薬にはこれまで積み重ねられてきた多くのエビデンスがあることからも、今後も副作用や長期予後について注意深くみていく必要がある。


11月新 塩谷郡市医師会学術講演会のコピー.jpg
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