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白内障と天文ファン、その他雑感

天文ファンの白内障手術、これは天文ファンにとっては一大事で関心が高いと思う。多焦点レンズの私の今の考え方も含め少し長いが雑感を記してみた・・。当然天文ファンも必ず白内障になる。

 眼の病気(老化)は髪の毛に例えてみるとわかりやすいです。白内障は髪の毛(水晶体)が白くなること、緑内障は髪の毛(視神経)が抜けるスピードの速い人のこと。1年前に比べればどんな人も髪の毛は白くなるし、髪の毛は毎年どんどん少なくなり増える人はいない・・。と、とある眼科医が言っていましたがまさにその通りで特に白内障はどなたも避けて通ることはできません。40を超えると白髪の一本や二本ぐらいは探せばどなたにでもあるように、白内障もどなたにでも40超えると程度の差はあれあります。
 眼内レンズ(人工水晶体)は、一般の単焦点レンズのほかに、先進医療で近くも遠くも見えると謳った多焦点レンズがいろいろと出ていますが、眼科医でこの多焦点レンズを自分の眼に入れようと思っている眼科医は少ないようです。デメリットを良くわかって自分の眼に入れる眼科医もいないわけではありませんが、眼科のような実体顕微鏡下に細かい作業を行う者にとってはデメリットの方が多いと思います。多焦点眼内レンズを使用するかどうかは患者さんがどこまで見え方の質について求めているかにもよります。因みに私の父には多焦点眼内レンズは入れていませんが、実母と義理母には多焦点を入れました。神経質な方には多焦点眼内レンズの見え方は合わない可能性があります。眼科医や天文ファンはこれに当たる可能性が高いです。多焦点レンズ(実際は2焦点:今3焦点レンズが日本では一部の大学で治験中。ヨーロッパでは3焦点が数年前から臨床で使われている。どれも決定打とは言えない。2つ〜3つに像を分けると言うことは、単純に考えたらわかるがそれぞれの見え方は1/2〜1/3となる。)日本の厚生労働省が使用を認めている多焦点眼内レンズは主に回折現象で焦点を2つに分けるという中途半端なもので天文やカメラが趣味の方には勧められません。要するに遠近両方見えると言うことは遠近両方見えにくいという事に繋がります。下半分が近用といった完全オーダーメイドの特殊な遠近両用の眼内レンズも並行輸入で眼内に入れることもありますが、これも遠近両用の眼鏡と同じく天文ファンを満足させることはできません。雑誌のテスト記事にあるような望遠鏡による星像の焦点内外回折像を比較、なーんていう作業はまったくできなくなります。さらに一般的な単焦点レンズにおいても白内障の手術は手術を受けた直後は単焦点レンズらしくクリアによく見えますが、時間が経つにつれて人工レンズの「あら」を感じるようになります。夜間に低照明のもと極大散瞳している状態でレンズの見え方を比較するような眼の使い方をする天体観測のようにシビアな要求にこたえられるような完璧な物ではありません。カメラに例えて言うとレンズの絞りを開放にして数学的な点光源である星像をもってしてイメージセンサーの端々まで星が点に写るかどうかテストを受けていることに匹敵すると考えねばなりません。また学会では最近よく話題になることですが、感覚の鋭い方(特に天文ファンなど)は術後に眼内レンズのエッジで光を感じたり影を感じたりします。これらは人工レンズを入れている眼内の袋(術直後は透明な袋)がある程度濁ってきたら改善するといわれています。しかし袋(水晶体嚢)が「濁る」わけですから見え方の鮮明度は当然落ちます。濁った袋をレーザー(ヤグレーザー)で吹き飛ばしても濁ったかけらが完全に貪食細胞で貪食されない場合もあり、そのときにはかえって飛蚊症がひどくなります。数年前のスカイ&テレスコープの記事にも白内障と天文の趣味、という題名で記事がありましたが、そこには白内障の手術をした天文ファンは天文の趣味をあきらめる方もいる、とありました。天文ファンには厳しいことを言うようですが、白内障の術後は星はそこそこ見えればよい、と言った妥協がある程度必要になると思います。星を綺麗な点像に見る事は難しいと考えねばなりません。星以外でも三日月などの単位面積あたりの光量が比較的少ない天体の見え方も、比較的光量が多く極大散瞳で見る事がない満月などに比べると光が散らばって見え、見え方に満足できない場合も多いと思います。
 白内障による視力障害が疑われたら、たかはし眼科に来られなくても近くの眼科医で診断してもらえば学会に属している眼科医であれば全く心配ありません。白内障に関して言えば眼科医によって診断能力に差があるような難しい疾患ではありません。白内障手術はホームページに惑わされず地元の評判、口コミが一番だと思います。一部の雑誌やマスコミを賑わしている白内障サージャンの中には実は怪しいところもあります。雑誌にでている手術症例数も桁違いに多いようですが、実は・・?、といった眼科もあります。要は有名人よりも、医療関係者、同業者が手術をたくさん受けている眼科で手術を受けるのが一番良いと思います。
単焦点レンズにもいろいろと種類があります。製法にも2種類あります。一部の雑誌、考え方が偏った一部の眼科医が、ある製法が悪いと決めつけていますが実際は一長一短でどちらが良いとは言えません。球面収差補正に関しても、球面レンズ、非球面レンズとあり、非球面が良いかというと症例により必ずしもそうとも限らず球面レンズは偏芯に強かったりある意味多焦点の機能があったりします。そもそもヒトの水晶体の球面収差の程度には人種差個人差があり球面収差を補正する機能が付いたレンズが必ずしも人間の眼に良いかどうかは意見の分かれるところです。眼内レンズの直径は、過去には5.5ミリがありましたが、今は、6ミリ、6.5ミリ、7ミリとあり、レンズ自体にコントラストを増しブルーライトをカットする黄色い色が付いているもの、透明なものなどもあります。(レンズに黄色を付けることにはハッキリとしたエビデンスはありません。)材質も後発白内障の起きにくいもの、レンズ自体が濁りにくいもの(完全に濁るものは今ではないですが視力に影響しない濁り、あわ粒のようなものや、白っぽくなりコントラストがおちるものはあります。濁りやすいものでも視力にはほとんど影響なく後発白内障が起きにくかったりで一長一短です。)、瞳孔の極大散大している時の径は年を取ると6ミリ以下になることが多く従って眼内レンズの直径も6ミリで十分といわれています。瞳孔径が7ミリというのは若いときだけ。眼内レンズを入れたらもっと小さくなることが多いです。天体望遠鏡のカタログに書いてある集光力の値は年を取るにつれて修正が必要になると言うことですね。

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の研

眼内レンズと星の見え方で検索しているうちにたどり着きました。

私は4年ほど前に網膜裂孔(もうちょっとで剥離)で右目を眼内レンズにしております。当初は眼鏡矯正で1.5の視力で非常にクリアに見えていましたが、一月ほど前から、なんだかちょっと以前ほど見えていない気がしていました。蛍光灯を見上げた時に曇りが感じられるくらいになりました。点眼すると多少改善するので、涙の量の問題かもと思っていました。

その後かかりつけの眼科では次回まで様子を見るとのことで具体的な指摘はありませんでした。
現在の視力は同じ眼鏡で1.0に落ちています。左目は1.2→1.5に上がっています。利き目は右目です。

昨日、私は天体望遠鏡を持っていないためアングルタイプのフィールドスコープで木星を見ようとした時(23:00)、右目の時だけ像が摺ガラス様に曇ることが頻繁にありました。その30分前、直視型スコープで彗星を見ようとした時は感じなかったのですが…
仰角の関係なのか、光軸に乗っている(だろう)時は非常にクリアなのですが、少しでも外れるとすりガラスになります。

今まで何度か同じように星を見ていたのですが、気がついたのは初めてです。眼内レンズはそういうものなのか、眼内の変化なのかご存知の点があれば教えていただければ幸いです。
眼科にはまた行く予定です。
by の研 (2020-07-20 09:33) 

の研

再びお邪魔します。
上記の件、おそらくは夜間瞳孔が広がると、点眼薬(ジクアス)による涙の粘性が増加した部分が視野に入り曇ると考えられるとのことでした。
ジクアスは起床後と就寝前、日中はティアバランスに変えて様子を見るということになりました。
お騒がせしました。
by の研 (2020-07-20 23:48) 

uppaship

気づくのが遅れてすみません。このブログはどこでも見られる単に私の健忘禄として使っているためこの様なことになります。
 ご質問の件ですが、白内障手術のあとはよほど真っ白になって手術をされた方以外は、異口同音に「手術直後よりも見えづらくなった。」とおっしゃいます。人工レンズの限界とも言えます。濁る場所は水晶体だけではなく水晶体周囲の透明組織、つまり後嚢面・硝子体などが術直後から徐々に濁ります。また白内障は若返りの手術ではなく白内障の手術をしても水晶体以外の部位は確実に老化・劣化・混濁してきます。老化は手術したからと言って食い止めることは出来ず、手術した直後から徐々に手術しない場合と同じように見え方は劣化します。
 術後のおっしゃるような見えにくい原因としてはいろいろあります。ジクアスの為と言うこともあるかもしれませんが、私が思うには、それだけではなく、一般の患者さん同様、老化による白内障術後の水晶体以外の透明組織の普遍的な劣化だと思います。
by uppaship (2020-12-20 00:42) 

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